Last modified: Thu Jan 15 21:14:32 JST 2015

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SuicaやPASMOを薦めない理由

このページにおける用語の定義として、
選択乗車
普通乗車券に対して旅客営業規則第157条 2 で認められた乗り方の事
大回り
通称
とします。

自動改札機で引っかかる

一定時間が経過すると自動改札機で引っかかるかどうかは、意見が割れています。大丈夫だと自信を持って言う人もいますが、それは自分の限られた経験がどんな場合でも通用すると思っているようです。あまり正確ではない情報も見受けられる掲示板ですが、Yahoo!知恵袋で関連する質問を見てみますと、 これだけ経験が寄せられているのですから、制限時間を設定している駅が存在するのは間違いないでしょう。後は個人の考えによると思います。引っかかったら有人改札に回ればいいのだから問題ないという意見の人もいます。私は、普通とは異なる乗り方をしているので、なるべく駅員に手間をかけさせないように心がけ、券売機で買った切符を手にして最初から有人改札で「大回りしていました」と出て駅員に無駄な手間をかけずに済むようにしています。

適用されるルールが違う

切符で選択乗車ができる根拠

選択乗車
旅客営業規則第157条 2 大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券及び普通回数乗車券(併用となるものを含む。)所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、同区間内の他の経路を選択して乗車することができる。

選択乗車ができる普通乗車券とは

旅客営業規則第18条 乗車券類の種類 を見ると、 普通乗車券というのは です。逆に、これ以外は普通乗車券ではありません。Suicaは「Suica乗車券」であり、普通乗車券とは別のルールが適用されます。後述します。

普通乗車券で終夜運転を利用して最長大回りができる根拠

継続乗車
第155条 入場後に有効期間を経過した当該使用乗車券は、途中下車をしないでそのまま旅行を継続する場合に限つて、その券面に表示された着駅までは、第147条の規定にかかわらず、これを使用することができる。

Suicaの大回りは全くの別物

これがポイントなんですが、 東京近郊区間と首都圏エリアの違い。ただし首都圏エリアの中に、JRの東京近郊区間のうちで大回りで乗れる路線は全て含まれているのも事実。



なお、私鉄も含んだ首都圏エリアの地図はこちらになります。

後述しますが、ICカード乗車券の場合は「選択乗車」が可能になるという規則はありません。別の仕組みで低廉な運賃になります。よって、通称の「大回り」の表現を使います。

Suicaで大回りができる根拠

東日本旅客鉄道株式会社ICカード乗車券取扱規則によると、
(IC運賃の計算経路等)
第29条 IC運賃の計算上の経路等については、旅客規則第68条第1項第1号、同条第2項、同条第4項第1号から第2号、第69条第1項第2号から第5号、第70条から第71条、第86条第1号から第2号、同条第10号及び第87条の規定を準用します。
とあって、旅客営業規則第157条 2の「選択乗車」は準用されません。しかし、
(Suica乗車券を使用する場合のIC運賃の減算)
第38条 Suica乗車券を第22条第1項の規定により使用する場合、出場駅において、入場駅から同一の取扱区間内を経由して最も低廉となる運賃計算経路で算出したIC運賃をSF残額から減算します。
とあります。SFとは Stored Fare の事で、チャージされた金額から、最も低廉となる運賃を引きます、という事です。第22条とは
第22条 旅客は、ICカード乗車券を用いて乗車するときは、自動改札機による改札(新幹線停車駅における新幹線用の乗継改札機での改札を含む。以下同じ。)を受けて駅に入場し、同一のICカード乗車券により自動改札機による改札を受けて、駅から出場しなければなりません。
の事ですから、結局は乗った駅と降りた駅の区間で一番安い経路となる運賃が、ICカードから引かれます。

Suicaで鶴見線を大回りする方法

以前は、鶴見までの運賃が引かれるという報告もありましたが、現在では、鶴見の中間改札にある自動改札機をタッチすると残高のみ表示され、入出場などの情報は書き込まれずに通る事ができるようです。一方、浜川崎では簡易SuicaにタッチしなければOK。 (ただし情報源はWikipediaの鶴見線です。そして、私はこの目で確認したわけではありません)

Suicaで終夜運転を利用して最長大回りができるのか

ICカード乗車券取扱規則をパッと見た限りでは、できると思われる条項は見当たりませんでした。
(Suica乗車券の効力)
第40条 第22条第1項の規定により使用する場合のSuica乗車券の効力は次の各号に定めるとおりとします。 (4) 入場後は、当日に限り有効とします。
とあって、有効期間に言及しているICカード乗車券取扱規則としては、以下しかありません。
(Suica特別車両券の有効期間の延長及び特別車両料金の払いもどしの特例)
第55条 Suica特別車両券を所持する場合で、当日最終の列車に乗り遅れた場合は、旅客規則第280条の規定を準用し、直ちに当該Suica特別車両券を係員に呈示し、係員がその事実を認めた場合に限り、有効期間の延長(ただし、その翌日までに限ります。)又は特別車両料金の払いもどしを請求することができます。
ここの「特別車両券」とは指定席券とグリーン券の事ですから、「入場後は、当日に限り有効」とあるICカード乗車券が、翌日も使える事になると思われる規則は見当たりません。普通乗車券の場合は、旅客営業規則第155条で「券面に表示された着駅までは、第147条の規定にかかわらず、これを使用することができる。」とあるのですが、ICカード乗車券には、旅客営業規則第155条が準用になるとはICカード乗車券取扱規則に書かれていませんし、そもそもICカード乗車券には着駅は存在しません。

ICカード乗車券まとめ

「Suicaでも大回りができる」のは事実ですが、終夜運転を利用して最長大回りもできるのかというと、私が規則を見た限りでは、出来ると思える規定は見当たらなかった、となります。普通乗車券を使った場合は、終夜運転を利用して最長大回りをしたという実績がありますが、実際にSuicaで最長大回りをしてIC運賃が133円しか引かれなかったという実績が積み重ならない限り、私は試す気になれません。

日帰りの大回りなら使えるでしょうが、自動改札でフラッパーゲートが閉まる可能性があります。「説明すればいいんだ」という考えの人もいるでしょうが、駅員が来て不正を疑われ事情を説明して納得させるのが好きというのでないかぎり、いかがなものかと思います。

いずれにせよ、普通乗車券を利用した選択乗車(通称: 大回り)と、SuicaやPASMOを利用したICカード乗車券の大回りは別物です。ICカード乗車券の大回りは。ルールが異なるというのを理解した上でなさってください。

モバイルSuica

モバイルSuicaは、例えば上司から不意に「電車で○×へ行こう」となったときに、ICカード乗車券を持ち合わせていなくても、「待っててください!」と券売機に並ばなくても手持ちの携帯をかざせば改札を通れたり、財布を忘れたけれどコンビニでおにぎりを買って食べたい、といった場合に非常に便利です。

反面、電池が尽きると困ったことになります。よくあるご質問 > その他にある通りで
Q. 携帯情報端末が電池切れとなっても使えますか?

A. 通話や画面表示ができなくなってしばらくの間(電池の劣化度合いや使用環境などで異なります)は、電池残量により自動改札機の通過が可能な場合もあります。しかし、電池の残量が完全になくなると全てのサービスが利用できなくなります。なお、改札から入場後にこのような状態になった場合は、SF、定期券およびモバイルSuica特急券のいずれの利用であっても、利用区間の運賃(必要により料金)を全額現金でお支払いいただきます。電池の残量には十分ご注意のうえ、きちんと充電された状態でのご利用をお願いします
ICカード乗車券には元から電池など無いので電池切れはありません。短時間の大回りならともかく、長時間の大回りの場合は、私はモバイルSuicaはおすすめしません。

参考リンク

目にした範囲では、ここが一番、詳しいように思いました。 ただしこのページでは
東京近郊大回り中に自己都合により途中駅で下車する場合は、出発駅から下車駅までの最安運賃ではなく、実際に乗車してきた大回り経路による運賃と、大回りきっぷとの差額を支払わなければならない (旅客営業規則第157条3項・第249条2項1号ロ)
と解説されていますが…
旅客営業規則第157条 3 選択乗車
前項 (注: 選択乗車中) の場合、普通乗車券を所持する旅客が、他の経路を乗車中に途中駅において下車したときは、区間変更として取り扱う。
とありますが、その区間変更というのは
第249条 区間変更 2 区間変更の取扱いをする場合は、次の各号に定めるところにより取り扱う。
(1) 普通乗車券
ロ イの場合において、原乗車券(学生割引普通乗車券を除く。)が次のいずれかに該当するときは、原乗車券の区間に対するすでに収受した旅客運賃と、実際の乗車区間に対する普通旅客運賃とを比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない。この場合、原乗車券が割引普通乗車券であつて、その割引が実際に乗車する区間に対しても適用のあるものであるときは、実際の乗車区間に対する普通旅客運賃を原乗車券に適用した割引率による割引の普通旅客運賃によつて計算する。
(イ) 大都市近郊区間内にある駅相互発着の乗車券で、同区間内の駅に区間変更の取扱いをするとき。
とあるので、出発駅から途中下車した駅までの最短経路の運賃と140円の差額を払えば良いのではないかと思うのですが。

例えば、品川から大崎までを、山手線内回りで大回りしようと思ったけれど、途中で気が変わって目黒で降りた場合ですが、実際に乗車してきた大回り経路が 30.4 km で東京の電車特定区間だから運賃は 550円、切符は140円だから、410円を支払います、という話になるのでしょうか。それとも「品川から目黒は160円だから20円の不足です」となるか、ですね。私は、後者だと思うのですが…前述の「Suica/PASMO大回り」のwikiが正しければ、410円払う事になります。wikiにコメントを寄せようとしたのですが、Facebookのアカウントを要求されるようで。Facebookは、やっていないものですから。

実際の乗車区間に対する普通旅客運賃が云々、というのは、割引普通乗車券の場合に適用されるものであって、学割を除くとなると団体割引でしょうかね。差額を清算する場合でも割引が適用される場合の事でしょう。140円の片道の普通乗車券は、割引は無いので、それより前の「原乗車券の区間に対するすでに収受した旅客運賃と、実際の乗車区間に対する普通旅客運賃とを比較し、不足額は収受し」だけが適用になり、「大都市近郊区間内にある駅相互発着の乗車券で、同区間内の駅に区間変更の取扱いをするとき。」の条項が適用になり、実際の乗車区間、すなわち品川から目黒の運賃との差を清算すればいいのでは。区間変更の場合も旅客営業規則第157条 2は有効、というのが私の解釈です。

以上ですが、ICカード乗車券を利用した大回りは人によって理解や解釈が異なるので、最終的には御自分で正誤を判断してください。目安として な解説はハズレな可能性が高いでしょう。もちろん私も規則に詳しいほうではなく慌てて目を通したに過ぎない段階なので私の理解が正しいとは主張しません。規則すら理解しようとせずに論じるのは問題ですが、規則を読んで自分で解釈しただけでは、間違った解釈をしていても、実際に「自分の解釈は間違いだった」と証拠・実例で思い知らされるまでは間違った解釈を信じますから。このあたりは、法律の条文を読んで理解しているつもりでも、実際の裁判所の判例では通用しないトンデモ理解をしている人が多いのと似ていますかね。実際にJRに勤務している人であれば旅客営業規則の解釈が正しいかどうかも(しかるべき部署に問い合わせるなどして)判断できるのでしょうが、そうでない人達が掲示板で議論しているのを見ても、どう考えても間違っている信念を強硬に主張し続けて納得しない人の方が多いです。
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